こんにちは、トロハチです!
今回は父とカラオケとのお話。
父の歌はクセが強いんじゃー!
父の歌はかなり独特でした。クセ強め。
歌うのは好きなのです。
問題は歌い方。
これでもかというぐらい情緒たっぷしに歌い上げるのです。
スピーカーから流れてくる音楽のテンポに合わせて、、、るのを見たことがない。
イントロが終わって歌が始まっているのに、歌声が聞こえてこない。
ためにためて、ワンテンポどころかツーテンポ遅れて声が少し高めの歌が入ってくる。
胸に手を当て、眉をひそめて。
それぐらい感情を溜めるのに、その割りには発声は吐息のように優しい。
かなり自分に酔っている様子。
どんな歌を歌っても大概この歌い方なのです。
ただ、唯一原曲とマッチしていたのが森進一の「おふくろさん」。
似ているわけではないのに、なんか情緒の波長が合っているのか、
なんだかわからないけれど、しっくりくる。
いつも通りツーテンポ遅れて、優しめの
「ぉふくろさんよぉ~」
から始まる。
そのあとの
「空を見上げりゃ~」
のあたりから、少し森進一の感情が乗っているような感じになるのだ。
そして節ごとにテンポ遅れてるのに、歌い終わりだけはなぜか合う。
どーゆー歌い方をしたらそう出来るのか。
もしかしたら非常に高度なテクニックなのかもしれない。
もちろん他の歌でも同じ歌い方。
若い世代の歌ではSMAPの「世界にひとつだけの花」が好きな父。
テンポも遅れ、音程もほどよくずれているが、本人は気持ち良さそうに歌う。
そして、聞いている方も笑けてくる。
上手くはないのだが、不思議な歌唱力をもつ父。
なぜか歌が上手くなっている?!
認知症になってからは、歌う機会もめっきり減った父。
歌うこと自体もあまり気乗りがしないことが多い。
そんなある日、行かないかなと思いながら
「カラオケ行ってみる?」
と声をかけるとまさかのイエス!
久しぶりに近くのカラオケに嫁さんと3人でお出掛け。
あまりにも久々だったので、何を歌いたいか、今までどんな歌をうたっていたかもなかなか出てこない父。
「宗右衛門町入れてみる?」
というと
「いいねぇ!」
と笑顔の父。
宗右衛門町とは「宗右衛門町ブルース」という曲で、「平和勝次とダークホース」という昔のコミックバンドのムード歌謡。
これも父の十八番である。
十八番といっても、例に漏れずこの曲もツーテンポ遅れる曲だ。
のはずなのだが・・・!
「きっと来てね~と~ 泣い~ていた~」
あれ?
全然テンポ遅れてない。
音程もとれている。
普通に歌えている!
なんと久々に聞いた父の歌は上手くなっていたのです。
認知症になったから上手くなった??
本人は自分の歌が変わったことに自覚がないようでした。
もしかしたら、感情を乗せるということ自体が難しくなっているのかもしれません。
感情を乗せて歌うということも、認知機能がうまく働いているからできていることなのかも。
しかし、良く言えば歌が上手くなったと言えるけど、悪く言えば普通になってしまった。
個性が消えてしまったようで寂しくなりました。
もう一度あのツーテンポ遅れた父の歌声が聞きたい!!
と言っても、今までのように歌えるはずもなく。。。
得たものがある一方で、失ったものもある。
なんだかどこかの格言のよう。
最近はコロナもあり、なかなかカラオケにも行けてないですが、
またあの歌声を期待して、家族でカラオケに行きたいと思うこの頃です。